近年、ダイエットや体質改善で注目を集めているファスティング。ファスティングにもさまざまな方法があり、どれが自分に合っているのか迷ってしまうほどです。また、健康に良いという話は聞くけど、「食事を取らないのだから代謝が下がって余計に太りやすくなるのでは?」という疑問を持っている方が多いはず。
でも実は、ファスティングによって基礎代謝は下がることはなく、むしろ基礎代謝の向上が期待できることがわかりつつあります。そこで今回は、ファスティングと基礎代謝の関係や働きについて、わかりやすく解説したいと思います。「ファスティングって本当に効果あるの?」と思われている方は、ぜひこのコラムを参考にしてください!

代謝は大きく分けて3種類
ファスティングと基礎代謝の関係を説明する前に、人間の基本的なシステムについて知ることが大切。まずは「代謝とは何か」について説明します。代謝とは、簡単に言うと「体内でおこる化学反応のこと」です。
私たちの体は、食事を通して外部から栄養素を消化・吸収し、エネルギーに変換して活動しています。そして不要になったものは外部へと排出されます。この一連の化学反応が「代謝」です。そして代謝は大まかに3つに分けられます。
1.活動代謝
文字通り、体を動かすことに使われる代謝のこと。例)ウォーキング〇〇分 何キロカロリーなど。活動代謝は、代謝全体の約30%を占めています。
2.食事誘発性熱産生(DIT)
少し難しい言葉ですが、これは食事をする事で消化に使われる代謝の事です。食事をしていると、体が温かくなる経験をしたことがある方もいると思います。それは、食事誘発性熱産生によるものです。代謝全体の約10%を占めています。
3.基礎代謝
私たちの体は、何もしていない休息状態でも常に代謝しています。例えば、心臓を動かしたり、呼吸、内臓の活動など、これらは意識せずとも行われている活動です。このような生命維持に必要な最小限のエネルギーの事を、基礎代謝といいます。人体における代謝の大部分は、この基礎代謝によるもので、その比率は全体の約60%です。以下でもう少し掘り下げて説明します。
基礎代謝とは
上記のように、基礎代謝とは安静の状態で消費される最小限のエネルギーです。基礎代謝がピークに達するのは男性が15〜17歳で約1600kcal、女性は12~14歳で約1400kcalとなっています。そしてこの時期を過ぎると、基礎代謝は少しずつ減少し始めます。男女ともに10代で基礎代謝がピークに達する理由は、この時期は成長が著しく、成長に多くのエネルギーを必要とするからです。基礎代謝は体重や筋肉量、性別などによって異なるので、ご自身の基礎代謝をあらかじめ知っておくと良いでしょう。
基礎代謝は加齢とともに減少しますが、それ以外にも、
・生活習慣の乱れ(食生活含む) ・ストレス ・睡眠不足 ・運動不足 ・むくみ
などがあげられます。
出典:独立行政法人 国立健康・栄養研究所(基礎代謝の測定ができます)
基礎代謝をあげるには?
基礎代謝は10代でピークに達すると書きましたが、基礎代謝を上げるにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは、基礎代謝を上げる方法をいくつかご紹介します。
1.筋トレをする
基礎代謝は筋肉量と大きく関わっているので、筋トレがおすすめです。筋トレと聞くと、きついイメージがありますが、まずはスクワットなど大きな筋肉をゆっくり動かす動作を1日15回程度から始めてみましょう。軽い汗をかく程度のウォーキングや水泳などの有酸素運動も効果的です。
2.食事に気をつける
筋肉をつけることと関連しますが、食事にも気を配ってみましょう。筋肉を作るタンパク質はアミノ酸という物質でできています。良質なアミノ酸を摂取する事で、効率よく筋肉を作り代謝アップが期待できます。
具体的には、次のようなものを摂取すると良いとされています。
・魚介類 ・チーズ ・大豆(豆類) ・豚肉 ・ゼラチン ・牛乳
など。
また、体温を高める食材を摂取することで基礎代謝アップに繋がります。
・カプサイシン(唐辛子・チリペッパーなど)
・ショウガ、にんにく、ネギ類など
3.ファスティングをする
ファスティングとは、いわゆる「断食」の一つです。一定期間、食事の摂取を中止する事で臓器を休ませ、腸内環境を整える働きがあるとされています。この働きにより、体内に溜まった老廃物を排出し、デトックス効果が期待できます。またファスティングには、ホルモン分泌を正常にしたり、疲れた脳がクリアになるなど、効果はさまざまです。
近年では、ファスティングをする事で基礎代謝がアップするという報告もなされており、大きな注目を集めています。ファスティングが基礎代謝アップに効果的である理由については、次の項目で詳しく解説します。
ファスティングによって基礎代謝が上がる理由とは?
食事摂取を控えると基礎代謝が下がるイメージがありますが、実はファスティングをすると基礎代謝が上がることがわかってきました。ここからは、ファスティングによって基礎代謝が上がる仕組みをご紹介します。
ファスティングの鍵を握るのはインスリン
インスリンとは、膵臓(すいぞう)から分泌されるホルモンの一種で、糖の代謝を調整し、血糖値を一定に保つ働きをもっています。日本人は欧米人に比べてインスリン分泌が低く、比較的早期に分泌能が低下することが指摘されています。
出典
身体は、「摂取した栄養素が入っている状態」と「入っていない状態」(空腹)に分けられます。摂取した栄養素が入った状態の人体は、インスリン値が高くなり、エネルギーを糖または脂肪として体内に蓄えます。そしてこのときに代謝が活発になります。
ところが栄養素が体内に入っていない場合では、インスリン値が低くなり、人体は蓄えてあるエネルギーを消費するようになります。
このインスリンの働きを考えると、現代人のように、朝・昼・晩の3食に加えて、スイーツなどの高脂質・高糖質を摂取する食生活は、常に「インスリン値が高い」状態となり、身体が「カロリーを蓄積する」状態にあるというのがわかると思います。
また、カロリーを抑えつつ食事回数を増やす食事法もありますが、これも結局はインスリン値が常に高い状態となってしまいます。したがって身体は体脂肪を燃やすことができず、抑えたカロリー分に合わせて基礎代謝が徐々に減少してしまいます。
なぜ、ファスティングによって基礎代謝があがるのか
では、なぜファスティングによって基礎代謝があがるのでしょうか。ある研究によれば、ファスティングを4日間続けた結果、基礎代謝が10%も上がることがわかりました。
その理由が、上記のインスリンの働きとの関係です。ファスティングをすると外部からの栄養補給が断たれます。するとインスリンの分泌が減少し、体内ではノルアドレナリン、成長ホルモン、コルチゾールなどの「インスリン拮抗ホルモン」が増加します。
それぞれの主な働きは、
・ノルアドレナリン・・筋肉の収縮を促す。心拍数をあげ、基礎代謝を上げる ・成長ホルモン・・細胞の成長と再生 ・コルチゾール・・ストレスホルモンとも呼ばれる、抗炎症や免疫抑制作用
となっています。
ファスティンングを続けることで、外部からのエネルギー摂取を断たれた私たちの身体は、別のものをエネルギー源として活用し始めます。それが、体脂肪です。そして、体脂肪を燃料とするために、インスリン拮抗ホルモンを出して生命活動を維持しようとします。
その結果、基礎代謝が上がり、活動も活発になることがわかりつつあります。ファスティングによって適度に空腹をコントロールすれば、長期間に及ぶ減量に必要なホルモンの生成を促すことができ、基礎代謝を上げながら空腹感を減らすことが可能となるのです。
まとめ
今回は、ファスティングと基礎代謝の関係についてご紹介しました。ファスティングによって基礎代謝がアップし、身体が本来持っている能力を取り戻すことができるのがお分かりいただけたかと思います。
ファスティングには他にもまだまだメリットがありますので、ご自身にあったファスティング方法を見つけて、無理のない範囲で挑戦してみてください!
まずは一日一杯のボーンブロスから。